猫にワクチンを打つ前に!知っておきたい種類や費用、時期や副作用について

大切な家族の一員である愛猫には、1日でも長く健康で幸せに生きてほしいというのは全ての飼い主の願いでしょう。そんな時、病気の予防の1つとしてワクチン接種は有効な方法といえます。

しかし、猫のワクチンといっても種類が多くどれを選べばよいのか分からないという方も多いはずです。

本記事では、ワクチンの種類や費用、打つ頻度について解説します。この記事が猫のワクチン接種について悩んでいる方の参考になれば幸いです。

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この記事の監修者

志村みゆきさん

志村みゆきさん

獣医師。日本獣医生命科学大学獣医畜産学部獣医学科を卒業後、獣医療、営業、編集者、研究助手、専業主婦などを経て、現在、医大の研究室にて動物実験や生化学実験業務に従事。

志村みゆきさん

猫のワクチンとは? 打つ必要はある?

猫に限らず一般的な動物は、細菌やウイルスなどの異物が体に入るとそれを取り除くために、体内の白血球の成分であるマクロファージなどの自然免疫細胞が異物を攻撃します。

さらに二次応答として自然免疫細胞から情報を受け取ったヘルパーT細胞がB細胞に抗体を作るよう指令を出すことで、異物の情報が免疫となって残ります。これがいわゆるワクチンの効果です。

子猫は、生まれた時に初乳や胎盤を通して母猫から免疫をもらいうけます。しかし、2~3カ月程度で母親からの免疫は効果が切れてしまうため、生後2~3カ月を過ぎたらワクチン接種をする必要があります。

ワクチンの接種は義務ではありません。しかし、感染症の中には予防はできても適切な治療法がないものもあり、家族である愛猫を守ってあげるためにも、ワクチンは必要と言えるでしょう。

猫のワクチンの種類と費用

猫のワクチンの種類は現在、1種・3種・4種・5種・7種が用意されています。ここでは種類ごとに予防できる病気や、ワクチンにかかる費用についてご紹介します。

なお、ワクチンにかかる費用は動物病院によっても異なるため、あくまで参考程度にご確認ください。

猫の1種単体ワクチン

猫の1種単体ワクチンは、猫白血病ウイルス感染症を防ぐ猫白血病ワクチンと、猫エイズウイルス感染症を防ぐ猫エイズワクチンの2種類があります。

どちらの病気も感染した猫に噛まれるなど咬傷や唾液を介することで感染し、一度感染すると完治は見込めず命を落とす危険性もある怖い病気です。

接種費用はそれぞれ3,000円から6,000円ほどとなっています。また、成猫が初めて猫エイズワクチンを接種する際は、事前にウイルス検査を行い猫エイズウイルスの感染の有無を確認してから行う必要があります。

猫の3種混合ワクチン(コアワクチン)

3種混合ワクチンは、以下の病気を防ぐことができるワクチンです。

  • 猫パルボウイルス感染症
  • 猫ウイルス性鼻気管炎
  • 猫カリシウイルス感染症

猫カリシウイルスは口の中や鼻の穴から肺までの粘膜、眼の粘膜などで増殖します。初期の場合は発熱やくしゃみ、鼻水など人間の風邪のような症状ですが、重症化すると肺炎を発症する可能性があります。

3種混合ワクチンで予防可能な病気は、感染力が高く、潜在感染して免疫力が弱くなると症状を表すウイルスなども含まれており、どれも重症化すると死亡率の高い病気です。

死亡率の高い病気が予防可能なワクチンは「コアワクチン」と呼ばれ、3種混合ワクチンで予防できる病気は全てコアワクチンに当てはまります。

猫パルボウイルス感染症のワクチンは、一度免疫を獲得すると長期間免疫力が維持されます。高齢の猫や他の猫と接触のない猫でも、3種混合ワクチンの接種はしておいたほうが安心と言えるでしょう。

接種費用は3,000円から7,000円ほどとなっています。

猫の4種混合ワクチン

4種混合ワクチンは、以下の病気を防ぐことができるワクチンです。

  • 猫白血病ウイルス感染症
  • 猫パルボウイルス感染症
  • 猫ウイルス性鼻気管炎
  • 猫カリシウイルス感染症

3種混合ワクチンに猫白血病ウイルス感染症の予防が追加されています。

猫白血病ウイルス感染症の症状は様々で、自然免疫で回復するケースもありますが、発症から3~4年以内に死亡してしまうケースもあります。

感染する時期が重要であり、生後直後に感染すると持続感染(感染した病原体が体内から排除されず、感染状態が続くこと)しますが、離乳期を過ぎた猫では約50%、1歳以上の猫では10%程しか持続感染はしません。そのため、ノンコアワクチンの一種とされています。

しかし、発症すると白血病だけでなく腎臓病など色々な病気の原因にもなるため、予防しておいたほうが安心でしょう。

猫白血病ウイルスのワクチンを初めて接種する場合は、事前にウイルス検査を行い感染の有無を確認する必要がある点は押さえておきましょう。

4種混合ワクチンの接種費用は4,000円から8,000円ほどとされています。

猫の5種混合ワクチン

5種混合ワクチンは、以下の病気を防ぐことができるワクチンです。

  • 猫クラミジア感染症
  • 猫白血病ウイルス感染症
  • 猫パルボウイルス感染症
  • 猫ウイルス性鼻気管炎
  • 猫カリシウイルス感染症

4種混合ワクチンにノンコアワクチンである、猫クラミジア感染症の予防が追加されています。

猫クラミジア感染症は人獣共通感染症の1つとされており、稀に猫から人へ感染する病気です。症状は軽度であれば結膜炎や目やに、くしゃみなどが一般的ですが、重症化すると肺炎を発症する可能性もあるため注意が必要です。

5種混合ワクチンの費用は5,000円から10,000円ほどとなっています。

猫の7種混合ワクチン

7種混合ワクチンは以下の病気を防ぐことができるワクチンです。

  • 猫カリシウイルス感染症(FC-28、FC-64)
  • 猫クラミジア感染症
  • 猫白血病ウイルス感染症
  • 猫パルボウイルス感染症
  • 猫ウイルス性鼻気管炎
  • 猫免疫不全ウイルス感染症

5種混合ワクチンに、肺炎や鼻気管炎を引き起こす猫カリシウイルス感染症(FC-28、FC-64)の予防が追加されています。


猫カリシウイルスには、複数の型の種類が存在します。7種混合ワクチンはFC-28とFC-64の2つの型が予防できるワクチンです。


7種混合ワクチンの接種費用は7,000円から13,000円ほどとなっています。

猫がワクチンを打つべき時期や間隔

ワクチンについて理解はできたけれど、いつ頃接種してよいのかが分からないという方のために、ここでは愛猫にワクチンを打つべき時期や間隔について詳しく解説します。

  • 子猫の場合
  • 完全室内飼いの成猫の場合
  • 外で様々なものに接触する成猫の場合

それぞれ詳しく見ていきましょう。

子猫の場合

子猫とは1歳未満の猫を指します。生まれたばかりの子猫は、母猫からもらえる移行抗体がまだ体内に残っているため、ワクチンを接種する必要がありません。

移行抗体が残っている状態でワクチンを接種しても子猫は抗体を作ることができず、無駄になってしまいます。移行抗体がなくなるタイミングでワクチン接種を行うことが大切です。

移行抗体がなくなるタイミングは子猫によって異なりますが、早ければ6〜8週齢、遅くても16週齢にはなくなります。

そのため子猫のワクチン接種は6〜8週齢で開始し、16週齢またはそれ以降まで2~4 週ごとに接種を繰り返すのがベストとされています。また16週齢付近で接種したあと、26~52週齢のどこかのタイミングでブースター接種することが推奨されています。

参照:世界小動物獣医師会「犬と猫のワクチネーションガイドライン」

完全室内飼いの成猫の場合

完全室内飼いの成猫の場合、他の猫や動物から感染するリスクは低いです。

コアワクチンの場合、「不完全ではあるが臨床上有意な免疫の最短持続期間が7.5年」とする研究があります。

そのため、コアワクチンは1年に1度ワクチンの代わりに抗体検査を行い、ワクチンが有効かどうかを確認します。有効な場合は3年に1度程度のワクチン接種で問題ありません。

ただし、ノンコアワクチンは1年毎の接種が望ましいとされています。定期的な健康診断は1年に1回が推奨されていますので、健康診断の採血と同時に抗体検査も行い、ワクチン接種の必要性を判断するのがベストでしょう。

また、高齢猫や生活環境がよく変わる猫の場合は、加齢やストレスにより眠っていたウイルスが活性化する可能性があります。このような場合も定期的なワクチン接種が必要になるでしょう。

参照:世界小動物獣医師会「犬と猫のワクチネーションガイドライン」

外で様々なものに接触する成猫の場合

外に出て様々なものに接触する可能性のある猫の場合、感染症に感染するリスクが高くなります。1年に1回混合ワクチンを接種するのがよいでしょう。

外飼いでなくても定期的にペットホテルを利用するなど、不特定多数の猫と接触する可能性がある場合は、1年に1回混合ワクチンを接種しておくと安心です。

また多頭飼いでその中の1匹でも外に出る猫がいる場合は、全頭が1年に1回ワクチン接種を受けることをおすすめします。

動物病院で不安のあるウイルスの抗体価を測定したうえで、それぞれの猫について接種するワクチンを相談することも可能です。

猫のワクチン接種で知っておきたい副作用のリスク

混合ワクチンは細菌やウイルスといった異物を体内に入れるため、少なからず副反応が起こるリスクがあります。ここではよく見られる軽微な副反応から、命に関わる重篤な副反応までご紹介します。

愛猫に混合ワクチンを接種した後は、副反応が起こらなくても接種後2~3日はストレスをかけず安静にすることが大切です。

猫の体内で免疫が作られるまでには2~3週間かかるため、その間は他の猫との接触を避け、感染のおそれがあるところには連れて行かないように注意しましょう。

重篤な副反応

ごく稀ではありますが、ワクチン接種によって重篤な副反応が出るケースがあります。

ここでは重篤な副反応とされる、アナフィラキシーショックと注射部位肉腫について紹介します。これらの症状が見られたら早急に動物病院を受診しましょう。

アナフィラキシーショック

アナフィラキシーとは、アレルゲン物質によりアレルギー反応が引き起こされた状態です。そして、アレルギー反応により血圧の低下や意識障害など重篤な状態になることをアナフィラキシーショックと呼びます。

つまりワクチンに対するアレルギー反応が起き重篤な状態に陥るのが、ワクチンで起こるアナフィラキシーショックです。猫のワクチン接種後の重篤な副反応の発生率はおおよそ0.01%程度という報告があり、非常に稀なケースとされています。

しかし一度アナフィラキシーショックになったことがある猫は再発しやすいため、注意が必要です。ほとんどのアナフィラキシーショックはワクチン接種後10分以内に起こるため、接種後10~20分は病院付近で待機しておくのがよいでしょう。

また、急性アナフィラキシーは、アレルゲンが侵入して数分から30分以内に起こる反応を指します。しかし、アレルゲンが侵入して2~3時間後に遅れて発疹が出る場合もあります。

顔面に症状が出た場合は、ムーンフェイスといい、顔が満月のように腫れてしまいます。ヒスタミンが末梢神経を刺激することにより刺激を伴いますが、生命に関わることはありません。

注射部位肉腫

注射部位肉腫は、注射をする部位に発症する悪性腫瘍です。ワクチンだけでなく様々な注射薬やケンカ傷など、刺激されやすい部位であれば発症するリスクのある病気とされています。

猫の注射部位肉腫は、原因が十分に解明されていない複雑な疾患です。発生頻度としてはアナフィラキシーショックよりも低く、接種後数カ月~2年後に発症するため、ワクチン接種と関連していることに気づかないケースも珍しくありません。

発症の平均年齢は約10歳とされています。悪性度が非常に高く、局所浸潤性(周囲の組織や臓器に広がりやすい性質)が強い腫瘍です。

初期の状態であれば、注射部位に小さなしこりが確認できるだけです。しかし、線維肉腫の場合進行が速く、線維肉腫が大きくなると筋肉や骨にがっちり貼りついたように動かしづらくなり、日常生活にも支障が出ます。

また約10%程度の確率で肺や目などへの転移が見られます。小さくてもしこりを発見した場合は、早急に動物病院を受診しましょう。

注射部位肉腫を予防する方法はありませんが、万が一腫瘤ができてしまっても切除しやすいように、ワクチンを含め、注射は肩甲骨周りではなく後ろ足などに打つことが推奨されています。

軽微な副反応

軽微な副反応は、以下のようなものがあります。

  • 顔が腫れる
  • 元気がない
  • 食欲が落ちる
  • 発熱
  • 嘔吐
  • 下痢
  • かゆがる

軽微な副反応の場合、ワクチン接種から24時間以内に症状が表れることがほとんどです。ワクチン接種を行った日は、外出を控えて愛猫の様子を観察できる環境を整えましょう。

また、動物病院が苦手な猫の場合、ストレスから体調不良になるケースもあるため見極めが大切です。

心配な症状がある場合は動物病院に相談し、必要に応じて受診するのがおすすめです。

愛猫に合ったワクチン接種を行おう

本記事では、ワクチンの種類や費用、打つ頻度について解説しました。

ワクチン接種は猫の生活環境や体質によって、種類や頻度を選択する必要があります。愛猫を定期的にペットホテルに預ける方や、外に出かける猫を飼っている方は、予防できる病気の種類が多い混合ワクチンを選ぶと良いでしょう。

また、アレルギー体質の猫やシニア猫、子猫は、種類が少なくても、負担の少ない混合ワクチンを選ぶのがよいでしょう。混合ワクチンは少なからず副反応が発生するリスクはありますが、予防できる病気は多いというメリットを認識しておきましょう。

混合ワクチンの接種を行い、家族の一員である愛猫が1日でも長く幸せで健康な生活を行えるようにサポートしましょう。

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