猫の癌とは
猫に限らず、全ての生き物の体は細胞からできており、細胞分裂によって新しい細胞と古い細胞が絶えず入れ替わる新陳代謝が起きています。
癌細胞は、細胞分裂の過程で生じた異常な遺伝子を持つ細胞です。この癌細胞は免疫の力により排除されることがほとんどですが、排除されずに増殖してしまうと、腫瘍化して癌になります。
良性と悪性の違い
体にできた細胞の塊を腫瘍と言い、腫瘍には良性と悪性があります。良性腫瘍と悪性腫瘍(癌)にはそれぞれ特徴があり、腫瘍の成長スピードや形状、転移の有無などを検査し、総合的に判断されます。
検査方法としては、レントゲンや、小さな針を刺して細胞を採取し顕微鏡で観察する方法、外科的に切除して病理検査に出す方法などがあります。
良性腫瘍の特徴
良性腫瘍には次のような特徴が見られます。
- 悪性腫瘍と比べて成長が遅い
- 周囲の組織を圧迫して押しのけるようにして大きくなる
- 転移しない
良性腫瘍の場合、手術で完全に取り除くことができれば再発は見られないことがほとんどです。しかし、良性腫瘍でも種類や発生した部位によっては悪性の症状を示すことがあります。
悪性腫瘍の特徴
悪性腫瘍には次のような特徴が見られます。
- 癌細胞が高速で無秩序に増殖し、どんどん腫瘍が大きくなる
- 周囲の組織に染み込むようにして広がり、巻き込んで大きくなる(浸潤)
- 癌細胞が血管やリンパ管に入り込み、そこから全身に広がりあらゆる臓器や組織、リンパ節などに転移していく
悪性腫瘍が体の中に増えることで、正常な細胞に栄養や酸素が供給されにくくなります。そのため、腫瘍そのものによる不調以外にも健康への悪影響が多々あります。
猫が癌になる原因
猫が癌になる原因として一番多いものは老化です。人間と同じで、猫も高齢になればなるほど、癌になる可能性は高くなります。
その他の原因としては、ストレスによる免疫力の低下や慢性炎症、肥満などの生活習慣、感染症などが考えられます。
癌の原因となる感染症としては、猫白血病ウイルス感染症や猫免疫不全ウイルス感染症、猫伝染性腹膜炎(FIP)などがあげられます。
また、遺伝的要因や放射線・化学物質への曝露、ホルモンの影響なども、癌の発症に関連することがあります。ホルモンが発症に関連する癌としては、乳腺腫瘍や肛門周囲腺腫、前立腺癌などが挙げられます。
猫の癌の症状
猫の癌の症状は初期症状と末期症状とで異なります。初期症状は全く見られないこともあれば、重篤な症状が見られることもあります。
それぞれの症状について詳しく解説していきます。
初期症状
まずは癌の初期症状です。初期症状の代表的なものは下記の8つです。
- しこり・腫れ
- 咳・鼻汁・鼻血
- 元気がない・散歩の途中で座り込む・疲れやすい
- 体重減少
- 慢性的嘔吐、下痢、便秘
- なかなか治らない傷や皮膚病
- 血尿、尿が出にくい
- 極端な性格の変化
それぞれ詳しく見ていきましょう。
■しこり・腫れ
リンパ腫や皮膚の癌、乳腺腫瘍の初期には、皮膚の下や体表リンパ節・乳腺などにしこりや腫れができることがあります。
■咳・鼻汁・鼻血
鼻腔内に発生する腫瘍や肺癌などの初期症状として、咳や鼻汁・鼻血などが見られることがあります。
■元気がない・散歩の途中で座り込む・疲れやすい
あらゆる癌の初期症状として、元気がない、疲れやすく散歩の途中で座り込むなどの様子が見られます。
■体重減少
体重減少もあらゆる癌で見られる初期症状の1つです。ごはんを食べていてもやせてしまう場合や、食欲がなくやせてしまう場合があります。
■慢性的嘔吐、下痢、便秘
胃や腸の癌などで比較的よく見られます。薬を使用しても良くならない時には注意が必要です。
■なかなか治らない傷や皮膚病
皮膚癌・リンパ腫などでよく見られる初期症状です。腫瘍の表面が自壊(皮膚を破って傷を作ること)してしまうこともあります。
■血尿、尿が出にくい
膀胱癌でよく見られます。腫瘍が炎症を起こして出血していたり、腫瘍が尿路を塞いでいたりすることなどが考えられます。
■極端な性格の変化
脳腫瘍ができると、腫瘍の発生した領域によっては性格が変化してしまうことがあります。
末期症状
癌の末期症状は様々ですが、初期症状に加え下記2つの症状が現れる場合があります。
- 機能障害
- 悪液質
局所の症状では、炎症や大きくなった腫瘍が圧迫することで機能障害が現れるケースがあります。また、全身症状として炭水化物やタンパク質の代謝変化などが原因による栄養失調で衰弱を起こす悪液質が現れるケースもあります。
末期は、初期症状でもみられた嘔吐や食欲不振、脱水がさらに進み、がんの進行に伴い呼吸困難も出現するため、心身共に辛い状況に陥ります。そのため、癌が悪化する前に適切なケアを行うことが重要です。
猫の癌の種類
猫の癌は全身のあらゆるところに発生します。皮膚にできるものもあれば、肝臓や腎臓など内臓にできるもの、血液の癌など多岐にわたり、症状も種類によって異なります。
ここでは猫に多い9種類の癌について解説します。
- 扁平上皮癌
- 肥満細胞腫
- 悪性黒色腫(メラノーマ)
- 乳腺腫瘍
- 肺癌・肺腫瘍
- 肝細胞癌、肝臓癌
- 血管肉腫
- 悪性リンパ腫
- 移行上皮癌・膀胱癌
それぞれ詳しく解説します。
扁平上皮癌
扁平上皮癌は猫の皮膚や口腔内に発生しやすい癌の1種です。
歯肉やくちびる・扁桃・舌などの口腔内や、耳やまぶた・鼻鏡などの色素のない、または色素が薄い皮膚でよく見られます。
猫の扁平上皮癌は転移が遅く局所浸潤性が高いものですが、発症するとあまり予後はよくないとされています。
肥満細胞腫
猫の肥満細胞腫は皮膚や内臓でよく見られます。
皮膚型の場合は、発症すると腫瘤を形成し、腫瘤に対して物理的刺激を加えると周囲の皮膚が赤くなる現象が見られます(ダリエ兆候)。手術での切除によって良好な経過をたどることが多いです。
内臓型の場合には、脾臓や消化管などでの発症が多く見られます。
悪性黒色腫(メラノーマ)
悪性黒色腫は猫でまれに見られる癌です。発症すると、くちびるや口腔内、まぶた・眼球内、爪の根本などに腫瘤を形成することが多いです。腫瘤とは、しこりのようなもので、腫瘍性のものと炎症性のものがあります。
猫での発生は稀とされています。腫瘤の表面は自壊して出血していることが多く、腫瘤は必ずしも黒色とは限りません。
乳腺腫瘍
乳腺腫瘍は、いわゆる乳癌です。猫の乳腺腫瘍は非常に多く、全腫瘍の約17%を占めるともいわれています。また猫の乳腺腫瘍は約90%が悪性であり、初診時に肺やリンパ節への転移が存在していると報告されることも少なくありません。
しかし、乳腺腫瘍は早期に避妊手術を行うことで発症率を低減することができるため、数少ない予防が可能な癌の1つといえます。
肺癌・肺腫瘍
肺癌の発症率は癌全体の1%未満であり、猫では珍しい癌です。発症すると、咳や呼吸困難など、肺炎に似た症状を示します。
乳腺腫瘍や悪性黒色腫(メラノーマ)、扁平上皮癌などから転移が起きて発症することも多いため、注意が必要です。
肝細胞癌、肝臓癌
肝臓の腫瘍に見られる症状は食欲不振・元気消失・嘔吐・黄疸などで、肝臓癌や腫瘍に特有のものはなく、早期発見が難しいことが多いです。
無症状であることも多いため、注意が必要です。
血管肉腫
血管肉腫は血管を構成する血管内皮細胞が癌化してしまうことで発症する癌の1種です。脾臓や肝臓、心臓、皮膚などで発症することがあります。
激しい運動や物理的刺激で破裂し、大量出血すると亡くなってしまうこともあります。
悪性リンパ腫
悪性リンパ腫は発生する部位により、胃腸管型や縦隔型、多中心型などに分けられ、症状は多様です。
最も発症が多いのは胃腸管リンパ腫です。猫白血病ウイルス(FeLV)に感染している猫では、縦隔型リンパ腫がよく見られます。
移行上皮癌・膀胱癌
猫の膀胱癌の多くは移行上皮癌と呼ばれる悪性腫瘍の1種です。初期症状は血尿や頻尿などで、膀胱に硬さがあり触れると痛がるなど、膀胱炎と類似しているため注意が必要です。
進行すると腫瘍により尿路が閉塞してしまったり他臓器に転移してしまったりすることがあります。
猫の癌の治療法
猫の癌の治療法の代表的なものには下記の3つがあります。
- 外科療法
- 放射線療法
- 化学療法
癌の種類や大きさ、発症部位などにより、これらを使い分けたり組み合わせたりして治療を行います。大学病院などへの紹介が必要になることもあります。
また、あまり実施されることはありませんが、免疫機能を高めることで治療効果を発揮するBRM療法という治療法も存在します。
外科療法
外科療法は外科手術によって癌を切除する治療法です。癌が一部分のみで転移がなく、きれいに取り除くことができれば根治が期待できます。
部位によっては機能低下や見た目の変化などが生じることもあるため、注意が必要です。
放射線療法
放射線療法は外科手術には不向きな脳や鼻の中、心臓の付近に腫瘍が出来た際の治療法です。
癌に放射線を照射することで癌細胞の遺伝子にダメージを与え、癌細胞を破壊します。外科療法や化学療法と組み合わせて実施されることが多いです。
実施するためには特殊な設備が必要であり、実施に際しては全身麻酔を行うケースがほとんどです。放射線療法は正常な細胞にも作用するため、機能不全などの副作用を起こすことがあります。
化学療法
化学療法は抗癌剤を用いた治療法です。血液の癌や全身に広がった癌、外科手術で取り除ききれなかった癌などに使用します。
全身に作用するため、重篤な副作用が生じるリスクがあります。複数回の投与が必要になることがほとんどです。
猫の癌の治療費
動物の医療は人間の場合と異なり、全て自費診療です。そのため、癌の治療で用いられるような外科療法や放射線療法は高額になる傾向があります。
各種治療を行った場合の想定される余命や無治療の場合の余命などを考え、獣医師と相談の上、治療法を決定する必要があります。
治療費用が不安な方は、ペット用の保険加入を検討しましょう。いざという時の負担が軽くなり、高額な治療を試しやすくなる可能性もあります。
愛猫が癌になってしまった時にするべきこと
愛猫が癌になってしまった時に飼い主としてするべきことは、下記の2つです。
- 治療法を決める
- 寄り添う
それぞれ詳しく解説していきます。
治療法を決める
癌と診断されたら、まずは治療法を決める必要があります。治療の選択肢や各治療の効果、メリットとデメリット、費用などを総合的に鑑みて治療法を決めましょう。
より高度な医療を望まれる場合には大学病院などへの紹介を提案されることもあります。治療法には正解はないため、よく考えて決めるようにしましょう。
寄り添う
愛猫が癌になってしまった場合、癌の種類によっては根治可能なものや治療効果が見込めるものもあれば、予後が悪く余命が宣告されてしまうこともあります。
いずれの場合でも、思い悩んだり、悔やんだりするのではなく、愛猫の苦痛をなるべく取り除き、愛猫が余生をなるべく楽しく、ストレスなく過ごせるように考えてあげることが大切です。
なるべく前向きに、今できる精一杯のことをしてあげましょう。担当の獣医師とよく相談し、なるべく元気な時間を長く過ごせる方法を選択してあげることがおすすめです。
余命がわずかで治療の効果が見込めない場合には、緩和ケアを行うことも選択肢の1つです。動物病院の中には緩和ケアを得意としているところもあるため、そうしたところに相談してみるのもいいでしょう。
愛猫の癌が不安な方は、ペット保険がおすすめ
本記事では、猫の癌の種類や治療法、もし愛猫が癌になったとき、飼い主はどうすれば良いかなどを解説しました。
癌は早期発見、早期治療が大切です。日頃からスキンシップを取り、些細な変化を見逃さないようにしましょう。不安な点は早めに動物病院に相談しましょう。
本記事で解説したように、猫の医療は全て自費診療です。特に癌の治療などは高額になるケースが多く、場合によっては治療を諦めなくてはならないこともあるでしょう。
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