愛犬が癌になったらどうしたらいい?犬の癌の原因や症状を解説

近年は犬の寿命が延びてきており、2021年の犬全体の平均寿命は14.65歳になっています。それに伴い、犬が癌になる割合は増加し、今では約2分の1が癌で亡くなっています。
そのため、愛犬が癌にならないための予防法や癌になってしまった場合の対応を考えておく必要があります。
今回は犬が癌になるとはどういうことか、どのような種類の癌があり、どのような治療があるのかなど解説していきます。犬の癌について知っておくことで、自身の愛犬が万が一癌になったときの対処方法を知ることができます。

参照: 一般社団法人ペットフード協会「2021年(令和3年)全国犬猫飼育実態調査 結果」

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この記事の監修者

石川愛美さん

石川愛美さん

獣医師。日本獣医生命科学大学獣医学部を卒業後、都内動物病院に臨床獣医師として勤務。現在は、動物病院を開設し、近隣への往診やオンラインにて飼い主の相談に答えたり、コンサルタントとして新規事業立ち上げの際、インタビューを受けるほか、記事執筆等を行う。

石川愛美さん

犬の癌とは

犬の癌は人間の癌と同様に、細胞分裂の際に遺伝子異常を持つ癌細胞が発生し、それが無制限に増殖することで発症します。

基本的に癌細胞は免疫の力により排除されますが、排除されずに増殖してしまうと、腫瘍化して癌になります。

良性と悪性の違い

良性腫瘍と悪性腫瘍にはそれぞれ特徴があり、発育形態や転移性・増殖性などが異なります。腫瘍の成長スピードや形状、転移の有無などを検査して判断されることが多いです。

良性腫瘍の特徴

良性腫瘍には次のような特徴が見られます。

基本的に良性腫瘍は、手術で完全に取り除くことができれば再発は見られません。しかし、良性腫瘍の種類や発生した部位によっては悪性の症状を示す可能性もあります。

悪性腫瘍の特徴

悪性腫瘍には次のような特徴が見られます。

悪性腫瘍が成長すると正常な細胞に栄養や酸素が供給されにくくなります。そのため、腫瘍による不調以外にも健康への悪影響が発生するケースもあります。

犬が癌になる原因

犬が癌になってしまうのには、主に4つの原因があります。

それぞれ詳しく見ていきましょう。

運動不足

運動不足により肥満状態になると、癌の発症リスクが高まります。日頃から適度な運動をさせるように心がけましょう。
しかし、肥満の犬に過度な運動をさせると関節炎や腰痛などの原因となるため、注意が必要です。愛犬の状態にあった適切な運動をさせましょう。

ストレス

犬は、環境の変化や運動不足、飼い主とのコミュニケーション不足などによりストレスを感じます。過度のストレスは癌の発症リスクを高めてしまうため、注意が必要です。
ストレスを抱えている犬は、食欲の低下や下痢などの症状が出る場合もあります。また、自分の尻尾を追いかける、空噛みする、異物を食べるなどの異常行動が見られるケースもあります。
愛犬がストレスを感じていそうな場合はストレス要因を探し、改善してあげましょう。かかりつけの動物病院に連れていくのも1つの手です。

食生活

食事内容も癌の発症に関係します。食事の与え過ぎによる肥満や質の低いドッグフードをあげることは、癌の発症リスクを増大させるため注意が必要です。
信頼できるメーカーのドッグフードを適切な量与えましょう。

遺伝

癌の発症には遺伝性の要因も関連します。そのため、特定の犬種で発生しやすい種類の癌が存在することを知っておきましょう。
愛犬の犬種に多い癌があれば特に注意し、定期的な健康診断を行い、早期発見・早期治療を心がけましょう。

犬の癌の症状

犬の癌は、発生初期には症状がほとんど見られないことが多いです。
見られる症状も発生する部位や種類によって様々で、癌以外の病気で見られる症状と類似していることも多いため、注意が必要です。
代表的な症状は、下記9つです。

それぞれ詳しく見ていきましょう。

しこり・イボ

今までなかったしこりやイボが突然現れた場合は、腫瘍の可能性があるため注意しましょう。
しこりは全身のあらゆる部位にできる可能性があるため、日頃から愛犬の体をよく触って確認することが大切です。

元気・食欲・体重の低下

元気がなくなることや食欲不振、体重の低下はあらゆる病気で見られますが、癌でも同様の症状が見られることがあります。
これらの症状が重い場合は、動物病院を受診したほうが安心でしょう。

咳・呼吸困難

咳や呼吸困難といった症状は肺炎や気管支炎、心臓病などの症状ですが、胸や肺、心臓に腫瘍が発生した際にも見られることがあります。
これらの症状が見られた場合には、動物病院でレントゲンなどの検査をするといいでしょう。

鼻血・鼻詰まり・くしゃみ・いびき・鳴き声の変化

健康な犬が鼻血を出すことは基本的に考えられません。鼻血が見られる場合は、鼻腔内に腫瘍が発生している可能性があります。
鼻腔内に腫瘍が発生すると、鼻血以外にも鼻詰まりやくしゃみ、いびき、鳴き声の変化などが生じます。病状が進んでいる可能性があるので、早急に動物病院を受診しましょう。

嘔吐・下痢・便秘

嘔吐や下痢、便秘などの消化器症状はあらゆる病気で見られる症状ですが、長く続く場合や症状が重い場合には癌などの腫瘍性の病気が疑われます。
これらの症状が長期間続く場合は、動物病院でレントゲン検査やエコー検査をしてもらうといいでしょう。

血尿・頻尿

血尿や頻尿は膀胱炎や尿石症でよく見られる症状ですが、癌でもよく見られます。
膀胱炎や尿石症の治療を行ってもなかなか治らない場合や何度も繰り返す場合には、エコー検査などで膀胱内に腫瘍がないか確認する必要があります。

体や足の痛み・ふらつき・麻痺

犬が体や足を痛そうにしている場合や歩行時にふらついている場合、麻痺などが見られる場合、多くは関節炎や椎間板ヘルニアなどが原因です。
しかし、骨や筋肉に腫瘍が発生している可能性もあります。治療をしてもなかなか治らない場合には癌の可能性を疑いましょう。

けいれん発作

けいれん発作は、てんかんや尿毒症などでよく見られます。てんかんの場合、脳腫瘍が原因であることもあるため注意が必要です。
脳腫瘍が疑われる場合にはMRI検査による確認が必要であるため、大きな動物病院への紹介が必要になることもあります。

腹囲膨満

犬のお腹が慢性的に張っている場合、腹水の貯留やホルモン病、腹腔内腫瘍などが疑われます。
腹水の貯留やホルモン病も腫瘍が原因で生じることもあります。いずれの場合においても、検査により原因疾患を特定することが大切です。

多飲多尿

多飲多尿が見られる場合、ホルモン病や腎臓病、糖尿病、子宮蓄膿症などが原因として考えられます。しかし、腫瘍によりこれらの病気が引き起こされている可能性もあります。
治療に対する反応が悪い場合には、腫瘍を疑って検査することも大切です。

犬の癌の種類

犬の癌は全身のあらゆる臓器や器官に発生する可能性があります。ここでは、癌が発生する箇所を8つの部位に分けて解説します。

それぞれ詳しく見ていきましょう。

皮膚の癌

皮膚の癌は、全身の皮膚に発生し、しこりとして確認されることが多いです。また、しこりの腫瘍は良性から悪性まで様々なため、検査することが大切です。
悪性であっても手術できれいに取り除くことができれば予後は良好とされるケースが多いです。抗癌剤や放射線治療などを必要とする場合があることも押さえておきましょう。

消化器の癌

消化器の癌は、口腔内や食道、胃、小腸、大腸などあらゆる部位で発生し、リンパ腫や扁平上皮癌、メラノーマなどが比較的多く見られます。
治療には、外科手術で取り除く場合や抗癌剤治療を行う場合などがあります。

腹部の癌

肝臓や腎臓にも癌が発生する場合があり、発症すると腎機能の低下に伴う脱水や尿毒症、食欲不振、肝機能の低下に伴う黄疸や嘔吐などがよく見られます。
外科手術で取り除く場合や、抗癌剤治療を併用する場合などがあります。

泌尿器の癌

泌尿器の癌は、膀胱腫瘍が多く見られます。膀胱炎のような血尿や頻尿症状から始まり、腫瘍が大きくなると尿路をふさいでしまい尿が出なくなってしまうこともあります。
転移を起こしていることも多いため注意が必要です。

呼吸器の癌

呼吸器の癌は、鼻腔や気管などに生じます。鼻腔の癌は鼻血や鼻水、くしゃみなど、気管や肺の癌は咳や呼吸促迫などの原因となります。
癌が発生した部位によって放射線治療や外科手術、抗癌剤治療を使い分けます。

胸部の癌

胸部の癌は、心臓や胸腔内に発生することがあります。種類としては血管肉腫や中皮腫、リンパ腫などが多く見られます。
外科手術で取り除けないことも多く、その場合には抗癌剤治療などが検討されます。

脳・神経・運動器の癌

脳や脊髄、骨や筋肉に生じる癌です。脳や脊髄に生じた癌は麻痺やてんかん発作の原因に、骨や筋肉といった運動器に生じた癌は歩くことに異常をきたす原因となります。
発症する部位によって断脚や放射線治療などが検討されます。

生殖器の癌

生殖器の癌は、乳腺腫瘍や精巣腫瘍などがよく見られます。
発症前の若いうちに避妊手術や去勢手術を行うことで予防が可能とされています。生殖器の癌が心配な場合は、早めに避妊・去勢手術を行っておくといいでしょう。

血液の癌

血液の癌は、リンパ腫や白血病、骨髄異形成症候群などがあります。発症すると、血液中の細胞が癌化してしまい、免疫不全や食欲の低下、体重減少などを引き起こします。
基本的には抗癌剤治療が選択されます。

犬の癌の予防

本記事上部で述べた通り、最近では犬の約半数が癌により亡くなっています。癌は一度発症すると根治が難しく再発が多いため、予防が非常に大切です。
命に関わることの多い癌の予防法を理解し、愛犬の健康寿命を延ばしましょう。
犬の癌の予防として考えられる代表的な方法は、下記の4つです。

避妊手術や去勢手術をすることで、乳腺腫瘍や精巣腫瘍の予防が可能です。また、肥満は癌だけでなく様々な疾患の原因となります。栄養価の高いフードを適切な量与えましょう。
癌は早期発見、早期治療が大切です。自宅での健康チェックだけでなく、定期的な健康診断を行いましょう。また、タバコの副流煙なども犬の健康を害します。愛犬が発癌性物質になるべく曝露されないようにしましょう。

犬の癌の治療法

犬の癌の治療法の代表的なものには下記の4つがあります。

それぞれ詳しく見ていきましょう。

外科療法

外科療法とは、外科手術によって癌細胞を切除するものです。
きれいに取り除くことができれば根治が期待できますが、部位によっては正常な臓器の機能が低下するリスクもあるため注意が必要です。

放射線療法

放射線療法は、癌細胞に放射線を照射し、癌細胞のDNAにダメージを与え、破壊する治療法です。
しかし、正常な細胞にもダメージを与えてしまうリスクがあり、後遺症が残ることもあります。

化学療法

化学療法は、抗癌剤を投与することで癌細胞を破壊する治療法です。他の治療法に比べ、全身の正常な細胞にもダメージを与える治療法のため、副作用が強く出ることがあります。
複数回の投与が必要になることもあり、身体に大きな負担のかかる治療と言えるでしょう。

細胞免疫療法

細胞免疫療法とは、犬自身から採取した細胞を体の外で増やし、目的に合った細胞に変化させた後、本人に移植する治療法です。
細胞免疫療法には3つの種類があります。

活性化リンパ球(CAT)療法

活性化リンパ球療法は活性化されたリンパ球を使うことで癌細胞を排除する治療法です。この治療法では細胞障害性T細胞とナチュラルキラー細胞、ナチュラルキラーT細胞を使用します。
定期的な通院による投与が必要で、治療には長期間を要します。副作用はあまり見られないケースが多いです。

樹状細胞(DC)療法

樹状細胞は癌を攻撃する細胞障害性T細胞やナチュラルキラー細胞に、癌細胞の情報を伝達する役割を担う細胞です。
樹状細胞療法は、樹状細胞に癌の情報を覚えさせ、その後投与することで体内の免疫細胞に癌細胞の情報が伝達され、癌細胞を排除する治療法です。
樹状細胞療法は活性化リンパ球療法と併用されることが多いです。

脂肪幹細胞(ADSC)療法

脂肪幹細胞療法は、犬の脂肪から幹細胞を採取して体外で増やし、それを体内に投与することで、失われた臓器や組織の機能、損傷の再生などを促す治療です。
犬自身の脂肪から採取した幹細胞だけでなく、他の犬から採取した幹細胞でも治療に使用することができます。
脂肪幹細胞療法は、あくまでも損傷した組織の修復を目的とした再生医療です。癌細胞を排除する治療ではないことは押さえておきましょう。

愛犬の癌が不安な方は、ペット保険がおすすめ

本記事では、犬が癌になるとはどういうことか、どのような種類の癌があり、どのような治療があるのかなど解説しました。
癌は早期発見、早期治療が大切です。日頃の愛犬とのスキンシップや観察、定期的な健康診断が、がんの早期発見につながります。少しでも気になることがあれば、早めに動物病院を受診しましょう。
本記事で解説したように、犬の医療は全て自費診療です。特に癌の治療などは高額になるケースが多く、場合によっては治療を諦めなくてはならないこともあるでしょう。
ペット保険に入っていれば高額治療費用の補償を受けられる可能性があるので、治療の選択肢を増やすことができます。愛犬の癌について心配な方はペット保険への加入がおすすめです。

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